2015年11月7日土曜日

Carpaccio alla Cipriani 牛肉のカルパッチョ チプリアーニ風

上質な赤身の牛肉をさっとローストして周囲をトリミングし、レア部分だけを切り出すという安全な調理法で作ったヴェネチア発祥の生肉料理カルパッチョ。
今どきはオイルソースにパルミジャーノを散らす食べ方が主流ですが、マヨソース仕立てにするのが古典的なチプリアーニ風です。

カルパッチョというと真っ先に魚介の刺身料理を思い浮かべますよね。
鮮魚のカルパッチョは実はイタリア伝統料理ではなく和製イタリアン、考案したのはかの落合シェフだと言われています。
世界的な健康志向と和食ブームに乗って日本の寿司や刺身料理が海外でどんどん受け入れられ、魚介のカルパッチョもご本家イタリアに逆輸入され定着していったわけです。
でもカルパッチョとは本来は生肉料理。
脂や筋の少ないフィレやもも肉といった赤身の部位を薄くスライスしてマヨネーズベースの白いソースをあしらったものです。
この赤と白が16世紀に活躍した画家 ヴットーレ カルパッチョの作風を思わせることから、カルパッチョという名前がつけられました。
魚介のカルパッチョは創作料理だったわけですが、肉のカルパッチョは伝統的なイタリア料理かといえば、実はこちらもシェフの創作料理。
考案したのはヴェネチアのリストランテのオーナーシェフ、ジュゼッペ チプリアーニという人、今から50年ほど前のことです。
誕生してまだ半世紀と歴史は浅いですが、れっきとしたヴェネチア料理として広く認知されています。

生肉料理といえば、日本ではユッケの集団食中毒による死亡事件を機に生食用の肉の規制が強化されましたよね。
食中毒の原因となる腸管出血性大腸菌は動物の腸内に生息しているため食肉となる筋肉組織には本来はいません。
でも、解体処理の際にどうしても微量の菌が肉に付着してしまうため、これを増殖させないよう鮮度を維持しなければなりません。
ところが肉というのは処理直後の新鮮なものは味も香りもしないため、何日間も(牛肉では2週間から10週間以上も)低温で貯蔵しタンパク質が分解されて、アミノ酸やイノシン酸が形成されるまで熟成させてから流通するものなんです。
つまり、巷では熟成肉がやたらとブームですが、熟成肉ではない普通の肉も実は熟成肉なんですね。笑
この熟成工程や流通過程、販売陳列の状態が適切でないと、時間の経過とともに菌が増殖し食中毒を引き起こしてしまうわけです。

でも、安心してください。笑
ブロックの表面に付着した菌が肉の内部まで侵入することはないため、適切に加熱(60℃で2分)してから周囲を一定量削り落とすトリミングを行えば安全に提供できると厚労省も言っています。
家庭でこれをやるなら肉のたたきを作る要領で表面を香ばしくローストしてから、中側のレアの部分を使うのがお勧めです。
また、カルパッチョは肉を生ハムのように薄くスライスするのですが、家庭では難しいので、ある程度の薄さに切ったらラップで上下を挟んで麺棒などで叩いて薄くのばします。
それと、レアといっても生ではなくあくまで火入れされた状態であるため、生肉のようにしっとり感が保てません。
ワインを飲みながらゆっくりつまんでいると食べている端からどんどん乾いてくるので、皿に並べてからオリーブオイルを垂らして、指の腹でぺたぺたと全体にまわして保湿してあげるのもポイントです。

生肉料理のカルパッチョにはキャンティのようにタンニンが軽い赤か、辛口のロゼを合わせるのが定番。
同じヴェネト州のバルドリーノキャレットなら相性抜群です。

Ingredienti (per 4 persone)

牛ブロック肉(フィレかもも肉)500g
にんにく1/2片
ルッコラ1/2束
オリーブオイル適量
塩胡椒適量
per la Salsa Cipriani
マヨネーズ大さじ3
ひとつまみ
牛乳小さじ2
レモン汁小さじ1/2
ウスターソース小さじ1/2
白胡椒少々

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

牛肉のブロックは調理する30分以上前に冷蔵庫から出しておきます。
フライパンを熱してオイルをしき、トングで牛肉を掴みながら周囲全面に焼き目をつけながら強火でさっとローストします。
焼けた肉はバットに移して、しばらく休ませてから 5mmほどの厚さに切って、周りの焼けた部分をトリミングしたレアの部分をラップで包み麺棒で軽く叩いてのばします。

にんにくをカットして皿に擦りつけて香りを移し、叩いた牛肉を隙間がないように並べて、オリーブオイルを指でぺたぺたして保湿します。
粗塩をぱらぱらとふり、黒胡椒をしっかりめに挽きます。
真ん中にルッコラをこんもりと盛って、チプリアーニソース(上記材料を混ぜ合わせたもの)をスプーンで散らしかければ出来上がり。

トリミングした切れ端はそこそこの量になりますが、もったいないので塩胡椒をしてサラダの具やサンドイッチなどに使いまわします。
焼き目が香ばしくて、ステーキの切れ端みたいで美味しいですよ。

関連記事 - イタリアの肉料理

Carpaccio di Cavallo
プーリア風 馬肉のカルパッチョ
Arrosticini Abruzzesi
羊肉の串焼き アッロスティチーニ
Crostini Toscani ai Fegatini
レバーペーストのクロスティーニ トスカーナ風
Trippa alla Fiorentina
フィレンツェ風 トリッパのトマト煮込み


0 件のコメント:

コメントを投稿