2017年11月4日土曜日

Sformato di Frutta Secca 木の実のスフォルマート

潰したじゃが芋に卵やチーズを混ぜ合わせた生地に木の実を散りばめ、型に入れてしっとりと湯煎にかけて焼いた木の実のスフォルマート。
秋もどっぷり深まってきて冬を迎える準備に忙しい晩秋の北イタリアの食卓を思わせる一品です。

ハロウィンの喧騒が過ぎ街に静けさが戻ってくると季節はいつのまにか進んですっかり晩秋といった雰囲気になってきます。
鮮やかな紅葉を纏っていた山の木々もピークを過ぎてくすんだ枯葉色がちらほら混じるようになり、街はダークカラーのコート姿が行き交い、欅並木の参道は落ち葉に覆われ、幹や枝には暖色のイルミネーションを灯すための準備が進められています。

秋が深まってくると、胡桃やヘーゼルナッツといった森からの贈り物=木の実が美味しいシーズンの到来です。
日本では栗や銀杏を木の実と思って食べる人もそういないでしょうし、秋=木の実という感覚は日本人のDNAに刷り込まれていません。
里に暮らし畑を耕して暮らしてきた日本人にとって、自分たちが育くみ収穫した米や野菜などの農作物こそが秋の恵みであって、危険を冒して森に木の実を拾いにいく必要はなかったからです。
一方、森で狩りをし森とともに暮らしてきた西洋では木の実は秋の恵みであるとともに冬を越すための貴重な保存食でもありました。
木の実の恩恵に預かるのは人だけではありません、鹿や猪はドングリを食べて皮下脂肪を蓄え、リスたちも地面に落ちた木の実を集めてきては木の穴などに隠して冬に備えます。

現在のフランスやドイツなどが位置するヨーロッパ大陸の北方一帯は、日本とは違って山だけでなく平地も森林で覆われている特異な地域。
古の時代から人々は森の中に住み森とともに生活してきました。
ヘンゼルとグレーテルや眠れる森の美女といった童話なども森が生活圏として描かれ、子どもながらに自分(の住んでいる場所)とは違う何か神秘的で不思議な感覚を覚えたという方も少なくないかと思います。
その感覚はもしかすると異世界ファンタジーへの誘いだったのかも。
指輪物語やドラゴンクエストでおなじみの中世ヨーロッパ風の舞台設定は異世界ファンタジー作品の中でも日本人がとくに好きな世界観。
どこまでも深くて広大な樹海の所々に土地が開けて村や教会が点在し、村と村の間は深い森に閉ざされ、森には邪悪な魔物が棲みつき、伝説の剣を手にした選ばれし勇者が冒険の旅をする、なんてのがそれです。

実際の歴史を紐解いても、中世の人々にとって森は狼などの獣や悪霊、魔女や盗賊たちが棲みつく異界として恐れられていたようです。
一方で、森は人々の生活に欠かせない存在でもありました。
なにせ電気もガスもない時代です、樹木は薪にして暖をとったり食事を作るために燃やし、森に住むミツバチが集めた蜂蜜でロウソクを作って灯りをともしていました。
豊かな森は多くの生命の共同体社会でもあります。
森の植物は土中の無機物を吸収し光合成を行うことで有機物を合成し、その有機物(葉や実など)は昆虫や鳥や動物たちの食料となり、枯れた植物や動物の死骸は微生物やきのこなどの菌類が分解して無機物に変え最終的に土に返ってまた再び植物が吸収して光合成を行います。
森が命の連鎖を生むことで生態系が維持されているんですね。

さて、森に対する見識が深まったところで、今日はその森からの贈り物である木の実を使ったピエモンテ州の郷土料理スフォルマート。
スフォルマートは形がないという意味で、野菜などを原型をとどめないピュレ状にして卵やチーズと混ぜて湯煎焼きにした料理のことです。
スフォルマートという料理はこんな感じ、という定番的なものはなく、材料はなんでもいいし茶碗蒸しやプリンのように軟らかく仕上げたものもあればケーキのように焼き固めたもの、ココットのポーションサイズから大きな型で焼いて切り分けたものまでいろいろ。
形がないというより型にはまらないと言う方がしっくりきます。笑


Ingredienti (per 4 persone)

じゃがいも(キタアカリ)4個
玉ねぎ1/2個
1個
オリーブオイル大さじ2
バター50g
ローリエ2枚
アーモンド大さじ2
胡桃大さじ2
ヘーゼルナッツ大さじ2
ピスタチオ大さじ2
フォンティーナチーズ200g
適量
黒胡椒適量

※分量は一応の目安なので味見しながら作ってください

Preparazione

じゃがいもは皮つきのまま茹でて粗熱をとり、皮を剥いてボウルに入れ木べらでざくざく切るようにして粗く潰します。
玉ねぎはみじん切りにしてオイルでソフリットしボウルに加えます。
木の実はすり鉢などで粗く砕いて、卵、すりおろしたチーズ、塩胡椒、溶かしたバターとともにボウルに加えて混ぜ合わせます。

型の内側にバターを塗り、生地を流し込んでローリエを乗せます。
オーブントレイに水を張り、底が直接触れないよう割り箸などを置いてその上に型を置き、190℃で30分ほど焼きます。
しっとりと焼き上がったら断面を見せるように切り分けます。

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